2015年05月28日

「ボードゲームって何?」に対するベストアンサーを考えてみる

久々に実家の大阪に帰り、高校時代の旧友と飲んでいた時のこと。
「最近休みの日は何してんの?」とよくある話題へ。

ギター、カフェ巡り、テニスなどなど……
当たり障りのない趣味(失礼)で、ほどほどに盛り上がる。
そんな中、なんとなく流れで僕の番へ。

「え、俺はあれやん。ボードゲーム」
「……(1.5秒の沈黙)、へぇ〜」

……うん、分かってへんな。
「人生ゲームとかしてんのかな、こいつ。いい歳して…ぷぷぷっ」
という感じが伝わってくる!

「ボードゲームって何?」
「それは……えっとな。世界にはトランプとか人生ゲーム以外にも色々なアナログなゲームがあんねん。それぞれが独自のルールで、こうなんていうか、運と戦略のバランスがいいジレンマのあるゲームなんよねー」
「……(3秒の沈黙)へぇ〜」

やっぱ分かってへんやん!!!

と、このような体験はボードゲーマーの皆様なら1度はあるのではないでしょうか。
「ボードゲームって何?」と聞かれた時に、我々はなんと答えればいいのでしょうか。

毎回いきあたりばったりな回答をしてしまうので、今回は自分なりのベストアンサーを作ってみたいと思います。

【どうなったらベストなのか?】

そもそもから入りましょう。
「ボードゲームって何?」を伝えた後、どのような反応をされたらベストなのか。
例えばこんな感じですよね。

「へぇ〜面白そう!今度一緒にやりたい!」

要するに、「感動」や「驚き」。このあたりの感情をくすぐる言葉で返すことができ、聞き手の「やりたい」という「好奇心」に結び付けられれば、それはおそらくベストアンサーでしょう。

ちなみに、今回の記事はボードゲームの定義について語るものではありません。
あくまで、前述のようなシチュエーション、つまり相手が全くボードゲームというものを認知していない状況のとき、何を伝えれば相手をワクワクさせ、やってみたいと思わせるのか。そこについて考えてみるものです。

また、ベストは誰に伝えるのかによっても異なります。例えば50歳の女性に伝えるべき事と10歳の少年に伝えるべき事は違うでしょう。
今回のケースは自分によくあるシーンとして、20-30代の男性を想定して話を進めます(そうは言いつつも、なるべく誰にでも刺さりやすい言葉を模索してみますが)。

【重要なのは定義ではなく、ストーリー】

ここで、以前書いた記事をもう一度掘り起こしてみます。

「心に残るアイデアを伝えるためのチェックリスト」
http://begin-boardgames.seesaa.net/article/407444971.html

この記事の中で、伝えて記憶してもらうための重要な要素を書きました。それが以下の6つの要素になります(詳しくは前述のリンクから記事をお読みください)。

1. 単純か?
2. 意外性があるか?
3. 具体的か?
4. 信頼性があるか?
5. 感情に訴えかけているか?
6. 物語性があるか?

特にこのうち「物語性」ということに着目してみます。

つまり、私は今まで「ボードゲームはどういうものか」を定義的に説明しようとして失敗していました。しかし、この手のアプローチでは心に響きにくい。「ああ、そういうのもあるのね」で終わってしまう可能性が高いのです。
なぜなら、そこには物語性がなく、イメージしにくいからです。

そして、私は考えました。
要は「ストーリー」を伝えればいいのではないかと。

多くの人はボードゲームをやってみると「面白い!」と思ってくれます。
でもボードゲームと聞いただけでは、ピンと来ないし、その定義を聞いてもいまいち面白さが伝わらない。
ならば、ボードゲームの面白い部分を、「話を通して体験してもらえばいい」ということです。
つまり聞き手を没入させるストーリーテリングでボードゲームについて語るのです。

そこで、ボードゲームらしいジレンマで、なおかつワクワクして、分かりやすいものは何かを考えてみました。

そうして出来上がったのが、下記のお話です。

【「ボードゲームって何?」に対するベストアンサー】

「ボードゲームって何?」
居酒屋で程よく出来上がった友人が、あなたに尋ねます。

「そうやね、例えば○○君が探検家やとする。仲間5人を連れて、危険いっぱいの洞窟にダイヤモンドを求めて潜っとるわけよ、インディージョーンズみたいに」

ボードゲームが何かを聞いているのに、いきなり探検家の話をされて面食らいつつも、友人はそのシーンを想像して、ふんふんと頷きます。

「幸運なことに、○○君たちは探検の途中でダイヤを10個見つけることができた。その時、5人の仲間と○○君はそれぞれがまだ先に進むか、それとも帰るかを選ぶことになった。つまり、いっせーのでで、帰るか、進むかを宣言することにしたわけよ。今帰ればとりあえずダイヤを持て帰れる。でも、この先進めばもっとダイヤが出てくるかもしれへんで。それこそ20個とか。でも洞窟には危険が多いから、これ以上行けば死んでしまうかもしれへん」

友人は「ほほう」と頷きつつ、「俺なら帰るかな」と何となく考えているようだ。

「ただし! 帰るって決めた人が複数いた場合、今あるダイヤはその帰る人たち全員で山分けや。例えば6人中5人が帰るなら1人2個ずつしかダイヤを持って帰られへん。しかも、一回帰ったらもう洞窟には入られへんねん。でも、先に進むと決めた1人の探検家は、そこから先で出たダイヤは独り占めできるわけよ。さぁ、○○君ならどうする?」

「ええー……悩ましいなぁ。でも、もし1人で帰れたらダイヤ10個を全部一人占めできるわけやろ。うーん……どのくらいその先が危険かってことにもよるよなぁ……ぶつぶつ……」

友人はその悩ましい状況に首をかしげ、どうしようか真剣に考えている。
そこであなたは、友人にドヤ顔でこう言うのです。

「これがボードゲームやねん。今回は探検家っていうテーマやったけど、それこそ服の仕立屋とか、カーテン商人とか、色々なテーマに沿ってこういう良いジレンマがあんのよ。ルールもほんまに多彩やから、飽きひんし、違うゲームするたびにワクワクするで」

「へぇ〜面白そう!今度やろうや!」

やった! 第三部〜完〜


【ポイント】

今回はお気づきの通り「インカの黄金」(ダイヤモンド)をベースにしています。
このゲームのジレンマは個人的に非常に分かりやすく、また想像しやすかったためです。もしかするとより紹介に適したゲームがあるのかもしれません。自分がインストの得意なゲームでも良いかもしれませんね。
ポイントは4つです。

●定義ではなく、ストーリーによる体験でボドゲの魅力を語る

●細かいルールはカット。重要なジレンマパートだけを理解してもらう

●カードを使うなどの表現を使わず、あくまでストーリーとして伝える

●最後の〆で様々なテーマのボードゲームがあり、色々なジレンマがあるため遊ぶたびにワクワクすることを伝える

みなさんも「ボードゲームって何?」に対する鉄板のジレンマ体験ストーリーを考えてみてはいかがでしょうか。案外、何もない状況でそれを体験してもらうのは難しいかもしれません。

この問いが来た時に、必ずボードゲーマーが1人増えるようになれば、遊べる相手がもっともっと広がってハッピーですね。

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「あなたの毎日に、もっとボードゲームを!」

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WEB:http://www.kotatsu-party.com/ 
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Podcast「こたトーク!」
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http://kotatsu-party.sblo.jp/article/104937190.html
posted by らりお at 17:50| Comment(0) | アイデア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月08日

ゼロからボドゲを作って販売して分かった、3つのこと

2か月ぶりの更新…毎月更新目指すとか言ってたのにすいません、げふんげふん。

さて、5月5日のゲームマーケット東京春2015に出展してまいりました!
長かったようで短かった。すべてはこのブログで、昨年8月8日にボードゲーム制作プロジェクトとして発足したことから始まりました。

「ボードゲーム制作プロジェクトメンバー募集」
http://begin-boardgames.seesaa.net/article/403411740.html

結果はどうだったかというと……。

初出展ながら、「猛牛が倒せない」は200個超、コラボ作品である
「CITRUS×CITRUS」は50個超と非常に大きな反響をいただきました。
今回のゲームマーケット参加者数が8,500人とのことなので、200個ということは42.5人に1人、クラスに1人が買ってくれた計算!また、時間という切り口から見ると、2分に1個買ってくれた計算になります。
試遊してくれた方も含めればそれ以上の人に来ていただいて、本当にありがたい限りです。

また、買った後に、実際やってみて「面白かった」という声もそれなりに届いていて、そこが一番報われるポイントでした。やはり「これ面白そう」と思って買っていただいたのに、想像と違ってNot for meなのが一番ダメだと思っていますので……。

さて、そのあたりも含めて、約1年を通してやってきた「こたパ」プロジェクトですが、総括として、自分なりに感じたことを無理やり3つにまとめたいと思います。

【ボードゲーム作りは簡単で、とてつもなく難しい】

ボードゲームを作りたい!
その思いはどこから来たんだろうと振り返ってみると……。
そもそもは、ボードゲームとの出会いが衝撃的で、こんな世界がもっと広がれば、日本はもっとハッピーになると信じたことでした。
あとはもちろん、自分が作ったものを誰かに遊んでもらって、喜んでもらいたいということも大きな原動力だったなぁ。

さて、そんなモチベーションがありつつ始めたボードゲーム作りですが、とにかく簡単で、そしてとてつもなく難しいという二律背反を感じました。

簡単なのは、知識や技術がなくても作ろうと思えば作れるということ。デジタルゲームを作ろうとすればプログラミングから習得しなければならないでしょうけど、ボードゲーム制作におけるそのハードルはとても低いです。

だからこそ、難しかった。
「誰でもできること」を「誰でもできないことにする」ために、どうすればいいか。
既にある大小様々なサークル(巷では多すぎると言われてるほど)と、どう差別化して、手にとって、遊んでもらって、更に面白いと感じてもらうのか。

アイディアは日常に転がっているからいくらでも思いつくし(言いすぎ?)、ちょっとゲームにしてみようと思えば確かにできる(面白いかは別)。でも、思い付きをゲームにすることが、そもそも自分たちがやりたいことなのかどうか、ここをプロジェクトではよくよく考えました。

そこで、「こたつパーティー」らしさって何だろうとか。「こたつパーティー」はどう思われたいかとか。そういうことをリーダーとして色々考えました。
で、結果的には「捨てること」から始めました。つまり、「やらないことを決めた」わけです。
何をやらないのか。ずっと昔からボードゲームが好きな人で、たぶんこの業界で影響力がありそうな人、そんな人たちに認められようとするのはやめる!という選択です(何度でも書きますが、認められる力があるかどうかは別の話ですし、たぶんこの方向性だと色々な面で無理が出たはずです)。

代わりに、ここ1〜2年でボードゲームに出会って、ちょっとハマって、周囲に全くボードゲームを知らない人たちがたくさんいる。そんな自分やメンバー自身の分身的な人を具体的なターゲットに沿えて、徹底的に彼らに楽しんでもらうためのゲームにしよう!と軸を決めました。

なぜなら、「こたつパーティー」のミッションは日本のボードゲーム市場をより盛り上げるために、ボードゲーム熱を伝搬させていくことですから。

そんなわけで的を絞って、プレイシーンなどを思い描きながらゲーム作りを始め、ゲーム内容、ルールで揉めたときはそこに立ち返って何がベストかを考え、決断してきました。
私たちはとにかくシンプルであることを今回重視していたため、思い切って捨てるシーンは多くありました。
その結果完成した「猛牛が倒せない」は、私たちが遊んでもらいたい人たちにとって、今の私たちなりのベストアンサーにできたと思っています。

冒頭にも書きましたが、「これは面白そう」と思った人が「確かに面白かった!自分に合ってた!」と思う。これがベスト。ワーストは買ってもらえないことではなくて、面白そうと思ったのに、面白くなかったことだと私は考えます。
その齟齬をなくすために、ゲームタイトルの付け方、ルール、作品の雰囲気など、細部に気を配ることが重要であると感じています。このあたりも、ボードゲーム作りの大きな難しさの一つかもしれません。

※全然別の話かもしれませんが、以前仕事で「美味しい」の定義は何か、について調査したことがありました。その一つの重要な要素は、「頭でイメージしていた味」と「実際の味」にギャップがないことでした。期待を良い意味で大きく裏切るのは良いことでしょうけど、ベクトルが違う方向にあると「美味しさ」にハマらないというのは面白い結果だったのを覚えています。

【前のめりにやることの大切さ】

私は以前、頭の中で色々考えて「あ、このアイデアは俺も考えたことある!」とか、よく思っていました。元々考えるのは好きな方なので、考えすぎるきらいがそもそもありました。
でも、考えていることは人から見えない。人はその人が何をしたのか、どんな行動をしたのか、それしか見ていないということ。この一年で自分が意識してきたポイントはここだと思います。これはボドゲ制作プロジェクトを発起したこと以外にも、他の色々な経験に影響を与えました。

「何に対しても前のめりであること」は自分のルールになりつつあります。
一方で、考えたことをすぐやると危険であることも経験から分かってるので、2日考えて、それでもやりたければやる! 今はこんな感じです。

さて、ボードゲーム制作に話を戻すと、前のめりにやったことは大きくは二つ。

1つは初出展にもかかわらず歴戦のサークルさんとコラボして作品を作ったこと。
これはとても良い経験になりました。他のサークルさんがどう効率的に作り、どうアイデアを出し、どう形にしていくのか。それを一緒に体験することで、「こたつパーティー」そのもののレベル感が上がりました。
Twitterで全体に呼びかけていたものに飛びついて、前のめりで提案してコラボできた良い経験でした。

そうしてできたのが「CITRUS×CITRUS」ですね。
http://citrus-citrus.tumblr.com/

もう1つは、とにかく実際の販売にあたって、前のめりな接客を心掛けたこと。
私たちの作品はターゲットの性質上、予約を多数とる、というよりも現場でいくつ買ってもらうかということが重要でした。
ゆっくり歩く人に対して積極的な声掛けをして、その人に刺さりそうな言葉でうまく興味を引けたことが、当日販売で多く買っていただけた要因であると思います。
また5分で回せるゲームであったため、高い回転率で、継続的に買っていただけたのも大きな点でした。

一方で反省点もあって。
例えば、自分たち主催のゲーム会を開けばよかったとか、ボードゲームを制作されているより多くの人たちの関われれば良かったとか……。優先度が低くなってしまったことが、スケジュール的に後手になり、実行できなかったことも数多くありました。
この辺りは今後の課題です。

【チームで作るメリット>>>デメリット】

私が今回もっとも思ったのは、やはりチームとしてボードゲームを作って本当に良い点が多かったということです。おそらく一人で制作を始めていれば、飽き性の私は出展どころか、まともなゲーム一つ作ることすらできずに挫折していたでしょう。

以下、簡単にチームで作ることのメリットとデメリットをまとめました。

「メリット」
●チームメンバーそれぞれに得意な分野を振り、効率的に作業を分担できる
●選択肢が増え、より良いものを作れる可能性が高まる
●在庫リスクなど金銭的なリスクが軽減される
●大変な経験を一緒に乗り越えた仲間ができる
●チームとして動くことで自分自身に責任感が芽生える
●自分自身が大きく成長できる

「デメリット」
●ゲームの整合性が取りづらくなる(良いアイデアをつぎはぎした感じになりやすい)
●利益が分散される
●人間関係のめんどくささがある

重要なのは、これらのデメリットはリーダーとしての覚悟ややる気があれば、結構簡単に解消することができるということです。

これからもしボードゲーム制作をチームでしてみようと、行動を起こされる方は以下の点を意識し、表明した上でチームビルディングをするとよいと思います。

●そもそも何を目指すチームなのか。ゲーム制作を通して何をしたいのか。
●そのためにどんなチームでありたいのか。どういう価値観なのか。
●そのためにはどんなスキル、知識、経験が必要なのか。
●お金に関わる問題について、どのような方針なのか。

こたつパーティーの場合、このブログを通して募集し、2人が参加し、途中で1人が去り、1人が加わりました。紆余曲折はありましたが、今はとても満足していますし、このブログを書きはじめ、そしてプロジェクトを発起し、一定の成果を残せたことをとてもうれしく思います。

今後も同様に様々なボドゲ制作者が増えることを願っています!

そして、「こたつパーティー」は2期に突入し、これからもボードゲーム制作に取り組んでいきます。今後とも応援よろしくお願いいたします!

【まとめ】

●ボードゲームを作る時は、思い切って何かを捨ててみる。絞ってみる。

●全ては行動。2日考えたら、とりあえずやってみる。

●やるならチームがオススメ。自分の成長にも大きくつながる。

●こたパはこれからもボドゲ作りを続けるよ!

【ボードゲーム制作サークルPR】
こたつパーティー(こたパ)
「あなたの毎日に、もっとボードゲームを!」

New ゲームマーケット2015春 新作
「猛牛が倒せない」
「CITRUS×CITRUS」

WEB:http://www.kotatsu-party.com/ 
ブログ:http://kotatsu-party.sblo.jp/ 
Twitter: @kotatsu_pa

Podcast「こたトーク!」
「あなたの隙間時間を、ちょっとだけ彩るボードゲームトーク」
http://kotatsu-party.sblo.jp/article/104937190.html
posted by らりお at 18:47| Comment(5) | ボードゲーム制作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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