2015年03月11日

「枯山水」の成功をマーケティング的に分析してみる

久々の更新になります。色々多忙な時期で月1更新が限界ですが、細々とやっていこうかと思います!
さて、最近ボドゲに全く興味のなかった会社の先輩などから、「枯山水は当然やったの?」と聞かれて驚愕しています。ま、まさかこの人の口から「枯山水」という言葉が聞けると日がくるとは……!? いやはや、ヤフーニュースのトップに載るというのは、すごい認知効果があるのですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150304-00000036-asahi-soci

さて、非常にネットで話題になっている「枯山水」ですが、今更ながら、その理由について個人的な分析をしてみようかと思います。何かモデルをつくることができれば、第二、第三と矢を打ち、「ボードゲーム」というジャンルの普及につながるかもしれませんし!

順を追ってみていきましょう。

【そもそも、なぜこれだけメディアでとりあげられたのか?】

多少推測もありますが、大まかには以下の流れが考えられます

1. ボードゲーマー達が自身の枯山水プレイ画像をtwitterに多数アップ
2. 普段RTしない人も、見た目に反応してRTで情報拡散
3. Naverまとめなど他のキュレーションサイトに波及
4. 結果、メディア関係者など情報拡散のキーインフルエンサーの琴線に触れる
5. Yahooニュースのトップに取り上げられ、他メディア(TV、平面etc)も追随

キーポイントは大きく分けて3つあるでしょう。

@ プレイヤーが思わず写真に撮って共有したくなる仕組みがあるか

A 普段読み飛ばす人の目を止め、アクションを起こさせる面白さや意外性があるか

B キーインフルエンサーにメディア露出してもらうための要素を備えているか


このBの要素については、もちろん@と同様に「面白さ」「意外性」は必要なのですが、視点が若干、「利益」に寄ってくると思います。つまり、「記事製作者がPVを稼げそうと思えるか」、「そもそもテーマが分かりやすいか」、「自分のメディアの方向性と合うか」、「単純に儲かりそうか」、「コネクションがあるか」などでしょうか。

「枯山水」をこれにあてはめてみると…

@ 今回のゲームによる自分の成果が見えやすく、石のリアル感により本物の枯山水を作ったという満足感を醸成。記念に1枚撮っておこうという流れになりやすい。

A ソーシャルゲームの多くがファンタジー寄りの世界観が多い中、「枯山水を作るゲーム」という意外性がある。しかも、石が異常にリアル、良い意味で「バカっぽい」。だからこそ他の人に「これ見て(笑)」となりやすい。

B ヘッドラインが付けやすい。これまであまり注目されなかった分野であり、記者側から見ても意外性によるPVが稼ぎやすそう。見た目のインパクトで、誰が見てもとにかく分かりやすい


【マーケティング的に見てみると】

TVCMなど、従来のメディアによる企業による商品紹介は過去に比べてパワーが弱くなっています(それでも高齢者と子供には威力絶大ですが……)。
そのような状況の中で、広告をする際に重要なポイントは4つあると思います。

1. ターゲットを明確にして、彼ら彼女らの琴線が何かを調べて、提供する

いわゆる顧客インサイトを調べて、かなり焦点を絞った表現をしたり、まさに「あなたに向けてメッセージを届けています」という感じを出します。自分ごと化を進めるみたいな話ですね。


2. 突っ込み所を用意し、気になるやつになってしまう

普通のことを言っても既読スルーされるため、あえて変なことを言ったり、見せたりするわけです。ニコニコ動画などにアップされ、「公式が病気」タグがつきMADなどが作られ始めたりすれば、大成功ですね。最近だとキリンメッツのドラゴンボールコラボはかなりうまくいってそうです(飲みたいけど売ってない……)。


3. 見ざるを得ない場所で待ち構える

コンタクトポイントを考えるという話。アメリカの有名な例でいうと、ナイキの公園での広告。公園のごみ箱の後ろにバスケットゴールの四角い板を設置し、中央にナイキロゴを置いたところ、多くの公園で遊んでいる人が、ペットボトルなどをバスケットシュートし始める。ナイキはこの広告で売上を大きく上げたそうです。待ち伏せ作戦は結構有効ですね。


4. 第三者に勧めてもらう

口コミですね。家族、友人、メディア、権威のある人などから勧められると、企業から説明されるよりも納得感を醸成させます。


今回のケースでは、まさに2と4をうまく使えている点が成功要因といえそうですね。
私自身は1の方法で何かできるんじゃないかと思っていますし、3の待ち伏せ作戦もボドゲと親和性の高いジャンルに興味がある人を観察し、待ち伏せて情報を見せるのは有効だと思います。

【もう少しだけ要素を具体化してみると】

結局、どんなボードゲーム作れば「枯山水」みたいに成功できるの?
同じような方法をたどりたいなら、多分こういうことです。

プレイ中の画が「華やか」、「楽しそう」、「面白そう」の少なくとも何れか一つを満たし、誰にでもそれが伝わる分かりやすさ(インパクト)がある。ただし、顔出しの人そのものは写真に撮らなくてもいい(人を撮るとtwitterでは拡散しにくい。処理が面倒)

突っ込みどころのあるテーマにする。ボードゲーマー目線の突っ込み所ではなく、ボードゲームを全く知らない人たちにとっての突っ込みどころは何かを考える(枯山水は「渋すぎるボードゲーム」だったので、例えば「かっこよすぎる」「美しすぎる」などの形容詞+too muchなテーマが良いかも)。

制作者が本気になる(リスクをとる)。作品にとっての核となる要素については投資を厭わない(枯山水で、石がリアルでなければここまで話題にならなかっただろう)。

個人的には、この最後のエッセンスが非常に重要だと、改めて思いました。

制作会社であるNewGamesOrderさんは、枯山水の制作にかなりの投資をされたと聞いています。文字通り社運をかけた一大プロジェクトだったわけです。その結果、あの石ができ、枯山水の話題作りに大きく貢献しました。また、これだけ投資をされていて、回収のためにはかなりご自身の周囲などできる範囲の中で最大限の宣伝はされたはずで、そういった熱意も手伝い、メディアの方にもどこかでつながったんじゃないかなと推測しています。

やはり、「やると決める」「リスクをとったからには、意地でも回収する」という姿勢は、なかなか同人では難しいと思いました。

まだまだ課題は山積ですが、一歩一歩、やっていきましょう!

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2014年12月22日

あの人をボドゲに引き込むための3つの誘い文句

年の瀬も近づいております今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
そういえば、クリスマスという行事は、今年から廃止になったようですよ。カップルになったからといって町に出てきてイチャイチャせず、大人しく家でフタリコラしていましょう。

さて、先日の話です。
ボドゲを少しだけかじった友人から、こんな質問を受けました。
「らりおは将棋とかしないの?」
「将棋は基本ルールが分かるレベル、超弱い。スーファミの将棋ソフトの一番弱いレベルに負ける感じ」
「お、おう……。囲碁は?」
「囲碁はヒカルの碁読んで感化されて、俺もsaiって名前にしてオンラインでブイブイ言わせたる!って思ってやってみたけど、9路盤で挫折したレベル」
「(゜Д ゜)」

大きな分類でいえば、囲碁将棋とボドゲは同じジャンルにあるはずです。
ゲーム⇒アナログゲーム⇒ボードゲーム、少なくともここまでは同じはず。
何が違うのかといえば、大きく2つの点でしょう。

1. 普及度
知名度といってもいいかもしれませんが、囲碁や将棋はプロとして食べていけるゲームであるということ。これにより競技人口が非常に多く、対戦相手が見つかりやすい世界であるのは、我々の遊んでいるボドゲというジャンルとは大きく違う点でしょう(今後ボドゲも普及していくけどねっ!)。

2. 情報開示度
囲碁将棋は完全情報ゲームと呼ばれている、いわゆる運の要素ゼロなゲームです。ボドゲにも同様のゲームはありますが、全体数で言えば少ないことと、また普及度が異なるため、「知らないルールにいかに早く対応できるか」というまた違った要素で楽しめるということがあります。

……はてさて、そういえばなぜ私は囲碁や将棋ではなく、ボドゲをしているのでしょうか。
将棋や囲碁は早々に挫折したのに、なぜボドゲは楽しめて、しかも自分で作ろう、という段階まで行っているのでしょうか。
そこにはボドゲを知らない人をこっちの世界に引き込む際に、とても刺さる何か重要な要素が隠れているのでは!?

……というわけで、囲碁将棋とボドゲの違いについてもう少し深堀りし、そこから色んな人をボドゲに引き込むための具体的な誘い文句について考えてみることにします。

【ボドゲはワガママを叶えてくれる】

のっけから、批判を食らいそうな小題を付けてみましたが、あくまで私のケースですし、ワガママ=悪いこと、というニュアンスでもありません。

では、何がワガママなのでしょうか?
簡単にいえば、「楽してダイエットしたい!」というやつです。
ダイエットしたいならそれなりに努力しろ、と体育会系な人に怒られそうですが、私は運動なんてしたくないです。だって辛いじゃないですか、冬は寒いし、夏は暑い!ついでに好きなもの食べたいんです、カキフライ好きだし、ハンバーグも好きだ!でも……痩せたいんです!(割と切実

ボドゲはそんなワガママなあなたの夢をかなえてくれる魔法の道具、かもしれません。
ボードゲーマーがダイエットしたいかどうかは知りません!
しかし、多くの人は結構「勝利」には貪欲です。勝ちたい、だってゲームだし勝負だから。でも、勝つためにそんな努力はしたくない、だってゲームだから。……どっちだよ!!

しかも、一応「自分だから勝てた感」もほしいんですよね。これ、俺がプレイしてなくてもあいつに勝ったよね、ってのは嫌なんです。「いやーあの一手は最高だったでしょ」ってドヤ顔して言いたいんです!まぁまぁ、なんてワガママなやつだ。
私の場合、ボドゲのこの独特のポジションがとっても好きなんですよね。だって、ボドゲなら羽生四冠に勝てる可能性あるんですよ!(将棋なら歩3枚で負け続ける自信あるけど)

つまり、ボドゲは努力したくないけど勝ちたいというワガママなニーズを満たしてくれる魔法の遊びなのです。
勝ったら「自分の実力」と感じられるし、負けたら「運が悪かったな!」と思えちゃう。実際には言わないんだけど、心の中で思えばいいから、Win-Win、全員ハッピー。もちろん、完全に運じゃなくて実力で負けてることもあるのですけど……(最近の重ゲーは結構そういうゲームが多い気がしますね)。

一方、将棋や囲碁は負けたら、常に自分が悪い。相手は自分より上だと証明されてしまう!それは嫌だ、だって負けず嫌いだから!! だけど、その分成長を実感しやすいゲームでもあります。囲碁サロンとかで比較的高齢者の方が多いのは、やはり年をとっても成長している自分を感じられるのはうれしいのでしょうし、それが快感なのだと思います。
まぁ私は真正面から負けるの嫌だけど、努力もしたくないから、まだまだボドゲがいいです!(弱腰

ですので、めんどくさがりな人やワガママな人はボドゲ潜在プレイヤーです。
そんな人には、「努力しなくても勝てて、しかも気持ちよくなれるゲームやらない? 負けたら運が悪かったって言えばいいからさ!」と誘うと効果覿面かもしれません!?

【ボドゲは人生の縮図である】

by らりお。

「囲碁や将棋とボドゲ、どちらが現実的ですか?」 と質問してみたところ、囲碁や将棋のほうが現実的、役に立ちそう!という回答をいただきました。
そもそも質問をあえて抽象的にしているのですが、多くの人が囲碁や将棋のほうが頭の回転に寄与するのではないか、と考えたようです。
でも、本当にそうでしょうか。少なくとも「現実的か?」という問いに関して言えば、ボドゲのほうが現実的です。

ん、現実的って何かって? 私が声を大にして言いたいのは、この科学が発展した現在においてもなお、全ての情報が見えているなんてありえないということです!
例えば将棋は合戦モチーフなゲームですが、戦国時代の合戦において、あいつは今ここにいるから、っていうのは絶対分からないはずなんですよ。もちろん偵察部隊はいたでしょうけど、そこから逃れて茂みに隠れている別動隊もいたはずです。超精密なGoogle Street Viewがあれば話は別ですが!

もっと現在に話を戻すと、誰がうちの会社の商品を買ってくれているのか、ライバルは今どんな製品を開発しているのか、なんで今日は上司の機嫌が悪いのか……世の中分からないことばかりです。
ビジネスや現実は不確実性の連続です
あらゆるリスクを勘案しておき、ワーストシナリオとベストシナリオを策定した上で目標を設定し、その上で様々な不測のトラブルを実際のオペレーションで乗り越え、時に大きな判断をして、目標を達成し収益を上げて、持続的成長を描く。

……あれ、まさにこれ、ボドゲじゃないですか!?

ボドゲは、そのモチーフこそ歴史だったり動物だったりいろいろですが、基本的にはこの不確実性への対処、つまり「運に対するマネジメントができるシミュレーター」であると思います。実際のビジネスにおいて、私たちはそう簡単にリスクを負えません。しかし、ボドゲはゲーム、負けてもお金を失うわけでもないですし、人事評価が下がるわけでもありません。
ボドゲを通して、運をマネジメントする術を学び、それをビジネスで活かす!
ね、すごく現実的で役に立つでしょ!

ですので、将来起業を考えているとか、仕事バリバリな人は、ボドゲの潜在プレイヤーです、間違いありません。そんな人たちには「仕事で結果を出すには、やっぱ不測の事態への対応力が重要ですよ。それを疑似体験できるゲームがあるんだけど、やってみない?」、これで決まりです。

なんか悪徳商法みたいになってきました。

【ボドゲであの頃を思い出す】

私はドラクエが結構好きです。なんで好きなんでしょうね、ボドゲじゃないけど。
うーん、やっぱり広いフィールドを冒険して、新しい町とかダンジョンとかモンスターとかボスとか、そういうのに出会って乗り越えていく感じ、あれがワクワクするんだなぁ。

未知との遭遇はきっと快感につながるのですね。そして、それを求めてボドゲをしている面も非常に大きいです。

以前私は記事で、ボドゲプレイヤーの3つの属性について書いたことがあります。

【コラム】初心者の私はこんなインストをされたい
http://begin-boardgames.seesaa.net/article/403951355.html

詳細は省きますが、その3つの属性の中でもっとも多かったのは、やはり「探究者」な人々なのです。つまり、ボードゲームに求めているのはルールとしての面白さ、新規性。彼らは味わったことのないワクワクを求めてボドゲをしているのです。

将棋や囲碁は研究に研究を重ねて、新手を発見し、またそれに対する研究がなされます。これはこれで新規性が次々と生まれてくるわけですが、ボドゲの新規性はより手軽で身近なものでしょう。

さて、そんな特性を持ったボドゲ、いったい誰に刺さるのか。
言わずもがな……「団地妻」でしょう!
団地妻といえば、私の勝手なイメージでは生活にマンネリを感じています。あまり日常に刺激がないから、ちょっと浮気してみたり、万引きしてみたり。ついついスリルを追求しすぎてしまうわけです(実態は知りませんが!)。
そんな彼女たちを健全なボードゲームへの世界へと誘いましょう。
「今の旦那さんに初めて出会った時のようなドキドキワクワクを、もう一度味わってみませんか?」
この口説き文句で、団地一帯でボドゲが流行りますね!

【まとめ】

●将棋囲碁とボドゲの違いは、普及度と情報開示度

●ボドゲは努力したくないけど勝ちたいというワガママなニーズを満たしてくれる魔法の遊び

●ボドゲはあらゆる不測の事態に対応する能力を養うシミュレーター

●ボドゲはあなたに未知の体験を与えてくれる、ドキドキワクワクの宝庫

●ワガママな子供も、エリートなお兄さんも、団地妻も。ボドゲでハッピー。

2014年最後の記事、こんなふざけた内容でごめんなさい。
「運をマネジメントするということの有用性」について書こうと思っていたら、いつの間にか団地妻をいかに口説き落とすか、という記事になっていました。

それでは、みなさまメリークリスマス & よいお年を!
来年も「こたつパーティー」とこのブログともども、よろしくお願いいたします。

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2014年09月17日

ボードゲーム市場構造の課題点と対策について考えてみる

【ボードゲームプレイヤーを層別に分解する】

今回のエントリーでは、ボードゲームプレイヤーを層別に分解し、市場構造の問題点、その対策について論じてみたい。相も変わらずデータはほとんど存在しないため、肌感覚や仮説に基づいた分析であることはご承知おきいただきたい。

では早速、ボードゲームプレイヤーを層別に分解してみよう。私の肌感覚で、ざっくりと以下の4つに分解をしてみた。

1. ヘビープレイヤー

現在のボードゲーム市場の中心にあるグループ。市場の8割は彼らによって賄われているだろう(パレート8:2の法則)。その他ホビー市場におけるヘビーユーザーと比較して、人を巻き込むことに熱心である。ゲームマーケットの来場者数から勘案するに、多くて約2,000人がここに属していると考える。

定義:以下の条件のいくつかに該当している。
・「趣味は?」と聞かれれば一番にボードゲームがくる(投資額が大きい)
・ボードゲーム専用の棚、置き場があり、一部屋の占有率が25%以上である
・オープンなボードゲーム会を主催している
・ボードゲームに関わることを仕事にしている

2. ミドルプレイヤー

趣味は複数あるが、そのうちの一つがボードゲーム、と答えるグループ。ボードゲームは友人と遊ぶためのツールであり、なおかつ自らの好奇心を満たしてくれるものでもある。市場への貢献度は全体の2割であり、一方で人数としては約8,000人と推測している(GM参加者数からの推計)。

定義:以下の条件のいくつかに該当している。
・自宅ボードゲーム会を主催している
・オープンなボードゲーム会に参加している
・ボードゲームに関する情報は一通り抑える
・気になったボードゲームを時々購入するが、保管場所に困るほどではない
・ゲームマーケットに参加

3. ライトプレイヤー

ボードゲームをプレイしたら楽しいと感じたグループ。ただし、更に自分で他のゲームについて調べよう、他人に勧めよう、自分でも購入しようとはあまり思わない。なぜなら、ボードゲームは多人数でワイワイ遊ぶものであり、買っても遊ぶ機会があまりない。「システムの面白さ<コミュニケーションツールとしての面白さ」を重視しているため、友人が持っていれば特に買う必要性を感じていない。ミドルユーザー以上の友人層に幅が広がるため、上位グループが一人あたり10人巻き込んでいると家庭すれば、約10万人がこの層にあたるだろう

定義:以下の条件のいくつかに該当している。
・友人の自宅ボードゲーム会に時々参加する
・ボードゲームは人生ゲームやUNOだけでないことを知っている
・楽しいが、自分で購入しようとはあまり思わない(友人の家で時々プレイすれば十分)

4. ノンプレイヤー

「ボドゲ、なにそれおいしいの?」「人生ゲームのこと?」というグループ。そもそもボードゲームという存在を認知していないため、調べることもない。現状、認知させる手段に乏しい(市場として小さい)故に、非常に多くの人がここに当てはまるだろう。

定義:上述の条件のいずれにも当てはまらない。


【層別に見た問題点とその解決策】

この構造は、エントランスが狭く、一部のハマる人によって市場が形成される、※ホビー市場の典型的な形であると思われる。具体的な市場規模としては、2011年の矢野経済研究所のデータが参考になる。

http://www.yano.co.jp/press/pdf/1002.pdf

※URLにもあるように、一般的にはオタク市場と呼ばれるが、私はこの言葉の与えるネガティブイメージが大きい気がして、あまり使わないようにしている。

上記サイトにリストアップされている物と、ボドゲ市場を比較し、層別も併せて考えると、大きく分けて2つの課題が存在すると考える。

1. 裾野を広げるのが難しく、ノンプレイヤー⇒ライトプレイヤーにレベルアップさせにくい

例えば、プラモデルやフィギュアは、コンテンツとの連動性が高い。ガンダム好きな人は、ガンプラのことを自然と知るし、試してみるかもしれない。また、ワンピース好きな人がそのフィギュアを集め始めることも流れとしては想像できる。
つまり、「既に人が存在する分野からお客さんを持ってこられるか」というのは、市場を発達させるにあたってとても重要な要素だ。
現状、ノンプレイヤーがライトプレイヤーになるために必要な要素は、「周囲にミドルまたはヘビープレイヤーがいるかどうか」という点が大きい。彼らによって布教されるかどうか。すなわち、遊び手依存型なのだ。

私はビジネスとしてこの市場をとらえるなら、作り手側が主体となってマーケットを広げなければドイツのようにはならないと思っている。
このブログで繰り返し主張していることで、難しいのは重々承知だが、市場を広げるなら「コラボ、コラボ、とにかくコラボ」だ。作り手は、日本で本気で売りたい、食っていきたいなら、制作物は何とコラボできるか真剣に考えるべきだろう(当然、私も含めて)。幸い日本はコンテンツの宝庫である。
コラボするにあたって必要な要素は「親和性」「相手にとってのメリット」、そして「人脈」だ。特に人脈が重要で、業界内⇒外への広がりを持つ、他の趣味、領域と掛け合わせる、などが必要と感じている。

2. ライトプレイヤーがお金を使わない構造になっている

多くの市場において、ライト層向けの商品が基本として存在している。そこから、ミドル向け、ヘビー向けに機能を付け、ブランド化していき、価格を上げる。
つまりライト層には大量生産でコストを下げて一般化された製品を提供し、ミドル・ヘビー層に対して多品種小ロット生産で高価格・高利益の製品ラインを提供するということだ。

しかしながら、ボードゲーム市場はミドル層、ヘビー層しかお金を使わない。なぜライト層はお金を使わないのだろうか?
それは「真の意味でライト層向けの製品が少ない」からだ。もちろん、製品そのもののスペックはライト層に耐えうるゲームはいくらでも存在する。しかし、ミドル層やヘビー層は「ボードゲーム会や、仲間との遊びの場でボードゲームを遊ぶ」という目的(理由)のためにボードゲームを購入している一方で、ライト層は「自分で主催してまでやる必要性を感じない」「友人に会に呼ばれればそれで十分だ」と思っている。つまり、彼らにはボードゲームを自分で購入する理由がないのだ。ボードゲームそのものは面白いと思っているのにもかかわらず。

では、真の意味でのライト層向けとは何か。それは彼らに対してボードゲームを購入する理由を作ってあげた上で、提供することだ。具体的には、「友人を呼んでボードゲームで一緒に遊ぶ」というハードルの高いシーン以外で、※ボードゲームが日常で果たせる役割、メリットを明確に提示することだと私は思う。
これをしていかなければ、ボードゲーム市場はミドル、ヘビープレイヤーのためのホビー市場という枠組みからは出られないし、規模としても現在からさほど大きく増えないだろう。

※例えば、醤油のキッコーマンがアメリカで成功した理由の一つは、肉を食べる手段として「テリヤキ」レシピを普及したからだ。「醤油=日本料理」というアメリカ人の思考を、「醤油=肉を食べる時の調味料」として、身近な価値観に落とし込んだ。これにより、アメリカにおいて醤油はもはやニッチ市場ではなくなった。

以上は今増えているであろうライト層に、(誤解を恐れず言えば)もっと「お金を使ってもらおう!」という戦略である。

この課題に対する打ち手としては、もう一つ方向性がある。それは、いかにライトプレイヤー⇒ミドルプレイヤーにレベルアップさせるか、というものだ。この確率を上げれば、この市場にお金を使ってくれるようになる。
ライトとミドルの決定的な違いは、「主体性があるか」という個人の性質による部分と、「新しい体験を求めているか」という点にある。前者に対するアプローチは難しいが、後者には「ボードゲームが提供してくれる価値」は「友人と遊ぶツール」というだけでなく、「新しい世界を知ってワクワクできる」というものがあると認知してもらえれば、レベルアップに貢献するかもしれない。
つまり、ボードゲームを「新しい遊びの体験」という位置づけにすることだ。

無論、私が仲間と進めているボードゲームプロジェクトは前者を目指している。

【ポイントの整理(図式化)】

・市場構造から見える課題は、認知していないノンプレイヤーが多すぎることと、ライトプレイヤーがお金を使わないことである。

ノンプレイヤー<<@認知の壁<<ライトプレイヤー<
@ 認知の壁を破るためには、「コラボ、コラボ、とにかくコラボ」! 既に人がいる分野から人を連れてくる

A 購入の壁を破るには、ライトプレイヤーがボードゲームを購入する理由を作る。主体性が必要なく、日常のよくあるシーンの中でボードゲームがライトプレイヤーに提供する価値、役割を明確化する。

B 主体性の壁を破り、ライトプレイヤーをミドルプレイヤーにレベルアップさせたいなら、ボードゲームを「友人との遊び道具」から、「新しい遊びの体験」という位置づけにする必要がある。
posted by らりお at 17:54| Comment(11) | 市場分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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