2014年10月20日

心に残るアイデアを伝えるためのチェックリスト

自身でボードゲームを作っているとき、「そもそもこのゲームの面白いポイントは何?」と自問自答すること……制作をしている方ならあると思います(私は今まさにそこに囚われています…)。別にゲーム作りをしていなくても、大学のレポートでも、仕事の報告書や企画書でも、読み手や遊び手がいるものならなんでもいいです。

簡単にいえば、「この中で何を一番伝えたいか」ということを考えて、いざ伝えようとしたときのことを思い出してみてください。

相手にそれを伝えた結果は、大抵の場合、極端に二分されるはずです。

1. 相手がピンときて、長い間それについて覚えておいてくれて、時々「そういえばあの件だけど」と尋ねてくれるもの。更に口コミまでしてくれるもの。

2. その場では聞いてくれて、分かったように頷いてくれたものの、その後フォローはなく、いつの間にか忘れ去られているもの。

私は結構読書が好きで、セミナーなども好んで行く方です。
ですが、その中でも未だに鮮明に覚えており、今も自分のものとして根付いているのはごく一部です。
有名なヘルマンの忘却曲線は24時間で人は今日覚えたことの75%を忘れることを示しています。私の場合、たぶん90%は忘れています……。

さて、ゲームを作るにせよ、広告を打つにせよ、私たちには「相手に正確に伝える」ということと、「伝えたことを長期間記憶に残してもらう」必要があります。
前者は単純に、ゲームの説明書を読んで理解してもらえるレベルにするということですね。これは既に様々な枠組みが紹介されていますし、ネットで検索すればチェックポイントも出てくると思います。

では、後者についてはどうでしょう。
「そもそも長期間覚えてもらう必要があるの?」「情報社会だからその場でRTしてもらえれば十分じゃん!」という意見もあるでしょう。
私の考えは、「情報が多いからこそ、私含めて人は記憶の取捨選択をシビアに行っているし、記憶に残らないものはいくらRTされても意味がなくなりつつある」というものです。
また、「長い間覚えていただけること」はブランドとして人々の心に根付くことですし、日常の中で何かのきっかけで「欲しい!」というトリガーにつながる可能性があります。

逆にいえば、どんなに良い研究成果を上げようが、ゲームを作ろうが、相手に伝わって覚えてもらい、試してもらわなければ意味がないわけです。
コミュニケーションは受け手が決めるという考え方があります。これは何かを言って伝わらなければ、それは伝えている人に原因があるというものです(例え相手に聞く気がなくても、聞く気にさせるのがこちらの役目と考えます!)

成長していくボードゲーム市場。
たくさんの創作ゲーム、輸入ゲームが出てくる中で、自分たちの作品を遊ぶために、「何を伝えるべきか」。
こんなことを考えていたところ、ある運命的な本に出会いましたので紹介させていただきます。

それは「アイデアのちから」(著:チップ・ハース、ダン・ハース)という書籍です。

ここでは、長期間記憶にとどめてもらえるアイデアには6つの法則がある、ということが紹介されています。
その6つは下記の通りです。

1. 単純か?
2. 意外性があるか?
3. 具体的か?
4. 信頼性があるか?
5. 感情に訴えかけているか?
6. 物語性があるか?

私自身の考えも交えて、少しだけそれぞれ紹介します。

1. 単純か?

当たり前かもしれませんが、記憶され、人に話したくなるアイデアやメッセージはとてつもなく単純です。
「3つ言うことは何も言わないことに等しい」「これ以上削るものがなくなったら最高の作品だ」という言葉がとても印象的でした。

自分たちのゲームのプロモーションという話になると、とにかく「こんな機能もあるよ!」「こんなとこも楽しいぜ、こだわったぜ!」と言いがちです(少なくとも私は言いたい!)。けれど、単純化されたメッセージの方が、よく伝わるものです。

2. 意外性があるか?

オチが予想できない。「CMのあと…衝撃の結末!?」というやつです。
人は予定調和を嫌いますが、一方で「あーこのパターン知ってる。これだろ?」と当たりをつけているものです。そこを見事に裏切ると、記憶に残るわけです。
ここで面白いのは、一度「これ知ってるよ!」と思わせるという点ですね。いきなり衝撃の結末を知らせても、ポカーンとか「嘘乙」で終わる可能性があります。

例えば、「これは人狼ゲームです。……ただしプレイヤーは全員村人で、しかもジェスチャーしかできません!」と仮にいえば、「人狼といえば、村人と狼の会話型正体隠匿ゲーム」という予定調和を裏切り、意外性を作れそうですね。

3. 具体的か?

本の中で紹介されていた例は、「ザボンという果物について文章で説明してください」というものでした。Wikiで調べれば色々出てきますが、めちゃくちゃ難しいわけです。
一番シンプルな答えは「大きいグレープフルーツ」ということ。これで味も見た目も色も形も、必要そうな要素は大体伝わります。
先ほど2で出した例に近いのですが、既に知っているものを利用すれば、相手に伝わりやすい。私の中でザボンっていうのは、そもそもドドリアさんの友達みたいなイメージだったのですが、今では完全に「大きいグレープフルーツ」のイメージで定着しています。

私のコラボの発想同様、既にあるものを利用するのは相手に伝えるときに、大きな武器になりますね。

4. 信頼性があるか?

無名の私が、ライナー・クニッツィアさんが現在頭の中で描いているゲームと全く同じものを、彼より早く開発できたとしましょう。
さぁ、これ面白いでしょ!? もうドイツゲーム大賞とっちゃうでしょ!?
しかし、そうはなりませんよね。それは私には信頼性がないから。これはブランド価値と言ってもいいかもしれません。一部の遊んでくれる人で価値を認めてくれる人はいるかもしれませんが、限度があります。

信頼性を担保する方法として、客観的なデータを使う、権威のある人に代わりに伝えてもらうなどがあります。人は定性的なものより、定量的なものに納得しやすいため、大事な何かを伝えるときは、数字との関連づけが重要かもしれません。

5. 感情に訴えかけているか?

メッセージを読んだり、話を聞いた時に、「え、なにそれ怖っ!」とか「かわいそう…」などの感情が自分に浮かび上がってくるとき、その話はたいていよくできています。
最近のボランティアの募金集めでは、「貧しいアフリカの子供たちに寄付しよう!」とはあまり言わないそうです。なぜなら皆が「ふーん」で終わってしまうから。確かに「大変だなぁ」と思うかもしれませんが、アクションにつながるほどの感情を呼び起こしません。

では、実際ボランティアではどのように言っているのか。
例えば、「5歳のジェシカは、毎日一切れのパンと泥水で生活しています」と呼びかけられています。

どう考えても、前者より後者のほうが胸に来るものがありますよね。
これは3の「具体性」にも関わってくるのですが、人は「大勢」よりも「個人」に弱い傾向にあります。それは想像しやすく、感情移入がしやすいことによります。
つまり、ゲームを作って紹介メッセージを考えるときには、まさに「あなた」に向けてそれを書くべきだということです。感情に訴えかけるとは、すなわち共感を呼ぶことでもあります。このゲームを遊んでほしい「あなた」に限定すると、刺さる言葉は意外に限られてくるかもしれません。

6. 物語性があるか?

そもそもイソップ童話などは、当然文書としても残されていますが、それだけで2000年以上も生き残ったわけではありません。人々がこの話を語り継ぎたいと思ったから残っているわけです。
なぜそう思ったのでしょうか。
それはここに物語性=教訓があるからです。
私が未だに覚えている物語は、「イチロー選手は子供のころ、暑い日も寒い日も、毎日バッティングセンターに通い続けた」というものです。めちゃくちゃ単純で、たぶんイチロー以外もそんな子供はたくさんいたはずですが、彼の実績から来る信頼性、単純さ、そして「たゆまぬ努力の積み重ねが成功につながる」という教訓がそこにあったからです。

そのメッセージから何か新しく得られるもの、自分の将来に影響を及ぼしそうな何か(ごく小さなものでも)があれば、それは記憶に残り安く、語り継がれるものになるようです。


さて、ここまで書いてきましたが、実は今私の手本にこの本はありません。
2か月前に読んだ本をここまで覚えているのは、この本そのものが法則に従って書かれているということを思い知ります。上述の内容はごく一部のエッセンスに過ぎず、他にも「経済なんだよ、バカ!」の話とか、「軍の食堂のシェフ」の話とか、「腎臓泥棒」の話とか…とにかく具体的に分かりやすく書かれており、楽しく読めます。
アフィリエイトでもなく、出版社の人間でもないですが、素直にお勧めできる本です。

読まずとも、上記の6つは相手に売り込む、伝えるときのチェックリストとしても有用かと思います。正直な話を言えば、全てを同時に満たすことは非常に困難です。
だって、ストーリー性があって、単純であるというのがそもそも難しいでしょ(笑)
ただ、これらの要素を意識して伝えれば、より相手の心に残るものになるのではないでしょうか。

これから、日本のボードゲーム市場は制作者が増えて、同人製品があふれるようになると思います。その中で、「遊んでもらいたい」という欲求を満たすためには、ゲームとしての面白さはもちろんのこと、伝え方が重要になるはずです。このチェックリストが、何かの折に皆さんの記憶にポップすれば、幸いです!

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こたつパーティー(こたパ)
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posted by らりお at 16:13| Comment(0) | アイデア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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